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ノロウイルスの殺菌、効果不十分な消毒剤も-医薬品食品衛生研究所が報告書(医療介護CBニュース)
感染性胃腸炎を引き起こすノロウイルスに対する消毒剤の効果を検証した報告書を、国立医薬品食品衛生研究所がまとめた。院内感染対策などで使われる次亜塩素酸については、ウイルスの感染力や毒性を失わせる「不活化」の効果がほとんどの消毒剤で認められた一方、塩素系消毒剤の一部は「十分な不活化効果は得られなかった」としている。【新井哉】
■次亜塩素酸、ほとんどの消毒剤で不活化確認
ノロウイルスに有効とされる次亜塩素酸ナトリウムは、酸化作用による不活化や殺菌効果があるとされる一方、こうした塩素系消毒剤は、有毒ガスによる人体への影響や金属腐食性によるさびが発生する恐れもあるため、使用が制限されるケースが少なくない。
消毒剤の代表格のエタノールは、不活化の効果がほとんど期待できないとされていたが、最近はエタノールの成分に別の成分を加え、効果を高めた消毒剤が市販されている。二酸化塩素についても、ノロウイルスを「除去できる」とする消毒剤が販売されている。
こうした状況や汚染環境下での有効性を確認する必要性を踏まえ、同研究所は、ノロウイルスの代替ウイルスのネコカリシウイルスを使って、次亜塩素酸ナトリウムや二酸化塩素などの塩素系消毒剤(10種類)とエタノール系消毒剤(11種類)の不活化効果の判定試験を実施した。
次亜塩素酸(6種類)は、肉エキスやウシ血清アルブミンといった有機物による負荷がない条件では、塩素濃度が低いとみられた1種類を除き、不活化効果が確認できたという。
■エタノール系消毒剤、「感染価減少」は7種類
一方、同じ塩素系の二酸化塩素の2種類は、十分な不活化の効果が得られなかった。その理由として、噴霧使用の製品だったことを挙げ、「ウイルスとの反応条件の違いによって不活化効果が示されなかった可能性が考えられる」としている。
エタノール系消毒剤については、有機物による負荷のない条件で「感染価が減少したものが7種類認められた」と指摘。「手洗い後の消毒や調理場など比較的清浄な環境において、有効性を示す製品を選択し、正しい使用法で用いることが重要」としている。
有機物を負荷した試験で、すべての負荷条件で検出限界以下まで不活化できたのは、亜塩素酸水の2種類(原液など高濃度なもの)だけだった。この結果を踏まえ、報告書は「十分な不活化効果を得るためには、汚染物の除去や消毒液を使用する前の掃除や洗浄が重要であることが再確認された」としている。