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介護人材による医療的ケアの範囲拡大へ 1年8カ月ぶりに議論再開(福祉新聞)
厚生労働省は5日、社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会(座長=田中滋・慶應義塾大名誉教授)を開き、介護人材の階層化を目指して議論を再開した。チームリーダーとなる人材に何を求め、どう養成するか、が主な論点だ。社会福祉士については、専門性を上げて活躍の場を広げる方向で年明けから議論する。2017年3月までに骨格を固め、カリキュラム改正などに反映する。
15年2月の同委員会報告書は、介護福祉士になるためのハードルの引き上げを先延ばしするよう提言した。深刻な人材不足が背景にあった。一方で、人材の質を上げることも必要だと指摘。15年度から3年以内に結論を出すよう求めていた。
同日、約1年8カ月ぶりに再開した同委員会は15年2月の報告書に沿い、すべての介護人材に同じ役割を求めるのではなく、初心者からベテランまで階層を設ける方向で議論する。
最大の論点は、介護現場でのチームリーダーの明確化だ。(1)高度な技術を持つ(2)他の職員に指導する(3)チームによる介護を管理する-ことをその姿とする。それを目指す介護福祉士を対象とした研修を用意する。
もう一つは、中高年齢者や就業していない女性など介護の未経験者を対象にした「入門的研修」の導入だ。介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級研修)よりも簡素なものとし、参入を促す。17年度中に議論をまとめる。
介護福祉士になるための養成カリキュラムも改正に向けて17年度中に議論する。新カリキュラムは4年制大学の場合は19年度から導入し、それを反映した国家試験は22年度から開始する。この点は15年2月の報告書に明記されている。
一方、新たに加わった論点は「医療との役割分担」だ。現在、介護人材には条件付きで業務としてのたんの吸引や経管栄養が認められているが、こうした医療的ケアの範囲を広げる方向で議論する。
厚労省が15年6月に公表した介護人材の需給推計は、25年に追加的に約38万人必要になると見込んだ。政府が掲げる1億総活躍社会に関連し、介護の受け皿を増やすための人材もさらに必要となる。
そのためか、厚労省は今年7月、医療と福祉の資格に共通基礎課程を設け、一つの資格を持っている人が別の資格を取る際に短い履修期間で済むようにする方針を掲げた。21年度の開始を目指す。
【解説】
「介護分野は専門性が求められる分野ではあるものの、『入りやすく昇りやすい』仕組みとしていくべきではないか」-。厚労省は介護人材のキャリアパスについて、同委員会の配布資料でこんな提案をした。これには「お手軽感がある」として、早速、複数の委員から異論が上がった。多くの人に介護の仕事に就いてもらいつつ、上を目指したい人にはそれ相応の道筋を示そう-。そんな合意があって、15年2月の報告書は「裾野を広げ、山を高くする」(富士山型)と打ち出した。それなのに「昇りやすく」という安易なイメージではダメだ、という訳だ。法改正したことを施行せず、延期を重ねてきたこの10年間の迷走に今度こそ終止符を打たなければならない。