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認知症リスクを回避するには? 医者が薦める「1週間トータル減塩法」

【怖~い「塩分過多」対策】

 塩分過多による高血圧は、心臓に悪いが脳にも悪影響を及ぼす。

 「高血圧による心房細動では、小さな血管が詰まる無症候性脳梗塞も多く、血圧の変動で脳の血流が悪くなると“ラクナ脳梗塞”を起こします。さらに、脳の表面からくさび状に広がる小さな脳梗塞の原因にもなるのです」

 こう話すのは、東京都健康長寿医療センターの原田和昌副院長。今月29日、同センターの「第157回老年学・老年医学公開講座」(東京・板橋区立文化会館大ホール)で「心房細動と認知症」の講演を行うなど、循環器疾患の診断・治療、予防の啓発活動にも尽力している。

 「心房細動では、心拍が乱れて血流が悪くなるため、血圧の変動で脳への血流も減少し、脳にダメージを与えると考えられています」

 心房細動は、心臓の上の心房がプルプルと震えて拍動しなくなり、心房に停滞した血液中に血栓が生じて、心室、大動脈を経て、脳へ到達して血管を詰まらせる。大きな血管が詰まる心原性脳梗塞だけでなく、小さな血管が詰まる無症候性脳梗塞も多い。また、高血圧が原因で起こるラクナ脳梗塞は、脳の画像診断で白い点となって現れるが、画像診断で大脳の中心の白質が白く変化した「大脳白質病変」を伴うことも多いのが特徴だ。

 「ラクナ脳梗塞や大脳白質病変は、認知症に関わります。つまり、高血圧を放置して心臓も悪くなると、認知症のリスクも高くなるのです」

 海外の論文では、塩分を過剰摂取させたマウスの脳には、アルツハイマー病と関りの深い変異型タウタンパク質がたまっていた。この研究では通常のエサの8~16倍の塩分量。国民健康運動の「健康日本21(第二次)」の目標は1日平均8グラムで換算すれば、8倍で1日64グラムになってしまう。塩分含有量が多い料理があっても、こんなには食べられない。厚労省の2017年「国民健康・栄養調査」では1日の平均値は約10グラムだった。とはいえ実際、高血圧によるラクナ脳梗塞などでの認知症リスクはある。

 「心房細動のリスクを下げるには、血圧130/80mmHg以下にしなければなりません。高血圧の治療目標も現在この数値になっています。高血圧の人は1日6グラム未満(3グラム以上)の心掛けが重要といえるのです」

 減塩は難しい。食べた塩の成分・ナトリウムを減らしてくれるカリウムやカルシウムをたくさん食べるという方法は、以前からある。だが、それも万能とはいえない。

 「いわば『帳消し方法』では、油断して塩分の見直しがおろそかになりがちです。1日6グラムを1週間のトータルで考えることが重要です」

 1日6グラムを厳格に実践すると、たとえば「好きなラーメンが食べられない…」など、ストレスがたまる。それを解消するのが原田医師お勧めの「1週間トータル減塩法」だ。週1~2回、自分へのご褒美の機会を設けつつ、減塩を実行しよう。(安達純子)

 ■原田医師が伝授!「1週間トータル減塩法」

 (1) 健康な人は1日8g未満を目標とする(高血圧や心臓病など持病がある人は1日6g未満3g以上)

 (2) 外食や買い物をするときには「栄養食品表示」を必ず見る。ナトリウム量g×2.54=食塩g

 (3) 3日間減塩に取り組んだら、4日目にラーメンなど自分へのご褒美を

 (4) 前日に塩分の多く含む料理を食べたならば、今日から再びしっかり減塩

 (5) 1週間の塩分量をチェックし、トータルで56g未満(高血圧などの人は42g未満)になるように心掛ける