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多量飲酒は「アルコール性認知症」のリスク。専門家が徹底解説、お酒との正しい付き合い方も
多量の飲酒は脳全体に影響があり、認知機能が低下してアルコール性認知症を引き起こすことがあります。そのメカニズムや症状について、東京都足立区の大内病院副院長で、同院内の認知症疾患医療センター長でもある松井敏史医師に聞きました。若年性認知症はアルツハイマー型、血管性認知症に次いで多く発症するとされていますが、お酒をやめて適切な治療を受ければ、回復する見込みがあります。
【解説画像】多量飲酒を続けた60代男性の脳と健康な脳と比較など
また、アルコールは脳だけでなく、あらゆる臓器に多大な害を及ぼします。東京都板橋区の成増厚生病院副院長で、同院付属の東京アルコール医療総合センター長を務める垣渕洋一医師は、「アルコールは薬物」と強調し、「副作用を理解した上で飲むべき」だと話します。記事の後半では、垣渕先生にお酒との正しい付き合い方について教えてもらいました。アルコール性認知症についてお話してくれるのは…
松井敏史(まつい・としふみ)
医療法人社団大和会 大内病院副院長
1969年生まれ。東北大学大学院医学研究科老年・呼吸器病態学助手、ハーバード医科大学神経変性疾患研究所を経て、2007年から国立病院機構久里浜医療センターで認知症・もの忘れ外来を担当。13~15年、杏林大学高齢医学准教授。【アルコール性認知症とは 特徴と原因】
アルコール性認知症は、飲酒によって引き起こされるさまざまな認知症をまとめた概念で、狭義では「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」を指します。
お酒を多量に摂取すると、アルコールを分解するためにビタミンB1(チアミン)が使われるので、脳内のビタミンB1が足りなくなって「ウェルニッケ脳症」を起こします。
症状としては、意識障害や歩行障害、そして眼球がけいれんするように動く眼振(がんしん)などが挙げられ、食事をとらずに多量の飲酒を続けるアルコール依存症の方に多く見られます。
以前は命を落とすケースが多くありましたが、最近ではビタミンB1を大量に静脈投与するなどの初期治療で半数以上が回復するようになりました。しかし、回復しても8割の人に、新しいことが覚えられない健忘、時間や場所が分からなくなる見当識障害、作り話をしてしまう作話(さくわ)などの後遺症が残ります。これを「コルサコフ症候群」または「コルサコフ健忘症」と呼んでいます。
脳はアルコールの摂取量に比例して萎縮することが知られています。多量の飲酒を続けた60代男性のMRI画像を見ると、同年代の健康な方と比較して脳が萎縮し、小さな脳梗塞(こうそく)が多発しています。1/5ページ