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脳の老化を防ぐ 歩くことはうつ病と認知症の予防につながる
誰しも、100歳まで自分の足で歩きたいと思っているもの。それには、普段から正しい歩き方をしていることが大事なのだが、そうはいっても、正しい歩き方とはどのようなものなのか、なかなか分からないのが普通だろう。
「JCHO東京新宿メディカルセンター」(東京・飯田橋)のリハビリテーション士長で理学療法士の田中尚喜氏によると、正常な歩行とは、まず後ろ足の母趾(足の親指)の指腹で蹴り出すことで重心を前方に送り出す。反対の足で支えながら、蹴り出した足を振り子のように前に振り出して歩くというもので、足は決して体よりも前に出ることはないのだという。
この歩行の方法によって、進む方の足では大臀筋上部線維およびヒラメ筋という筋肉が、そして支える方の足では大臀筋下部線維および大内転筋という筋肉が使われていると、田中氏は説明する。
「街で歩いている人を見ると、よく足を持ち上げて大きく振り出している歩き方の人がいますが、このような大げさな歩き方は決して体にいい影響を与えません。大股で歩くと結果として膝が曲がり、重心が上下するのを支えようとして、大腿四頭筋という筋肉を過度に使ってしまう。これによって、体に余計なダメージがかかってしまうのです」
正しい歩き方が分からなくなった場合はどうすればいいか。田中氏によると、その感覚を確かめるには、手すりのあるところで後ろ向きに歩いてみるとよいという。具体的には、手すりにつかまりつつ、爪先から地面に着いて、膝を伸ばしながら、後ろ向きに歩いていく。そのままの形で、かかとまで地面に着いたら、反対の足でも同じように歩く。その感覚を掴んだら、同じ形で前向きに歩いてみれば、それが正しい歩き方になっているはずだという。
「歩くというのは、消費カロリーの非常に少ない運動でありながら、足を刺激することで頭頂葉が鍛えられる。さらに、酸素が脳細胞を活性化することで、集中力をつかさどる前頭葉や、記憶力をつかさどる海馬にも血流量が増え、脳の老化を防止する効果があります。さらに、血管が鍛えられることで動脈硬化を防ぎ、脳梗塞のリスクも低くなるのです」
古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、散歩をしながら哲学の講義を行ったといわれている。
ほかにも、スティーブ・ジョブズも、歩きながらのミーティングを取り入れていた。歩くことには、創造性や発想を高める効果もあるのだ。スタンフォード大学で2014年に行われた調査によれば、歩いている時のクリエーティビティーは、歩かない時よりも平均で60%もアップすることが分かったという。
「心臓病専門医のサンジェイ・シャルマ教授がロンドンのセントジョージズ大学で行った研究によれば、歩くことはうつ症状を改善したり、認知症の発症を遅らせる効果があり、ウオーキングを習慣的に行うことで、3年から7年も寿命を延ばすことができるそうです。1日30分のウオーキングによって、体重の維持や肥満リスクの低減のほか、血圧や血糖値の正常化、冠動脈性心疾患のリスクの減少、そして、情緒が健康になるといった効果があることも分かっています」
まさに、歩くことは百薬の長ともいえる効能があるわけだが、100歳まで自分の足で歩くには、ほかにどのようなことを心掛ければいいのだろうか。