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入浴習慣で要介護減 高齢者が元気な「銭湯大国」のススメ
千葉大の研究グループが発表した「入浴と要介護リスク」の調査結果が話題だ。日頃から風呂につかる習慣がある高齢者は、介護の必要性が低くなるという。そこで、思いつくのが銭湯だ。銭湯なら入浴に加えて、散歩やコミュニケーションができる。元気な高齢者が目に浮かぶ。
研究グループは、要介護認定を受けていない高齢者1万4000人を対象に、3年間もの大規模調査を実施。その結果、週7回以上入浴している高齢者は、週2回以下の高齢者より介護が必要な状態になるリスクが、夏で約28%、冬で約29%減った。大きな有意差である。
「高齢者が銭湯に行けば、入浴の他に、適度な運動と人とのコミュニケーションができる。より健康に資すると言えます」(都内の医師)
銭湯が超高齢社会の国を救う――。ところが、銭湯は破竹の勢いで減っている。
全国の銭湯数(一般公衆浴場)は平成元年の1989年度は1万1724施設あったが、2017年度は3729施設。平成になって、3分の1に減った。
「自家風呂の普及で入浴者数が減少し、経営悪化や後継者難で廃業するケースが多い。それに銭湯は公衆浴場というくらいですから、人が集まる場所にあります。銭湯よりも収益が上げられる他の事業がたくさんあるのも銭湯減少の要因です」(厚労省・生活衛生課の担当者)
銭湯の“魅力的な立地”が銭湯の継続を難しくしているわけだ。近所に銭湯がなければ「銭湯救国論」も絵空事。
「このまま市場原理に委ねれば、これからもジリ貧が続く。銭湯を私的な営利活動ではなく、公的なものと捉え、国や市町村が全面支援して維持、発展させるしかないでしょう」(経済誌記者)
公的支援で銭湯を維持することは、当面の国や地方自治体の支出を増やすが、長期的に見ればメリットは数多い。
千葉大の研究で示されたように、入浴で要介護の高齢者が減れば、国や自治体の介護費用の負担は減る。風呂のない人に、きっちり入浴機会を確保し、銭湯の経営者も安心して営業できる。一石三鳥である。
「銭湯はセーフティーネットの面もあります」(前出の厚労省担当者)
現在、市町村や都道府県は、銭湯に対して、施設や設備費への補助金や融資、上下水道、固定資産税の優遇措置など公的支援を行っているが、守りの感は否めない。ここは思い切って銭湯に大胆な財政出動をして「銭湯大国」を目指してはどうか――。高齢者が健康なら国の財政も楽になる。