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歩きながらしりとり、計算…認知症対策には、同時に二つのことをする「デュアルタスク」
軽度認知障害から回復するのはなぜ?
認知症に治療薬を使っても、効果が表れる患者は一部に限られます。薬だけでは治療がうまくいかないとすれば、どうすればよいでしょうか。薬に頼らない対処法を考えます。
認知症の早期診断・治療に取り組む「メモリークリニックお茶の水」(東京)理事長の朝田隆医師によると、薬物治療以外で認知症の予防や改善に重要とされているのは、第1に運動、次に頭を鍛える脳トレーニングです。
認知症の前段階である「軽度認知障害」と判定された人のうち、4分の1は健常な状態に戻る、という国内外の報告があります。どのような人が健常に戻りやすいかを調べたところ、運動習慣がある、知的好奇心が強い、といった特徴があったのです。運動の中では、ウォーキングや水泳、水中ウォーキング、サイクリングといった有酸素運動が推奨されています。最近では、スクワットなどの筋力トレーニングも効果があると考えられています。
衰えた認知機能が回復するのは、なぜでしょうか。
認知症になるのは、老化などによって脳神経の一部が働かなくなり、思考や感情をつかさどる神経細胞の間の情報伝達ができなくなるためです。しかし、実際に使われている脳の細胞は半分にも満たないと言われ、脳には使われていない潜在的な力があります。脳神経の一部が障害を受けても、代わりに新しい情報伝達の回路が作られ、衰えた機能を補うと考えられています。「認知予備能」仮説と呼ばれ、運動や脳トレーニングは、この考え方に基づいて行われています。ウォーキング中に100から7ずつ引いていく
朝田医師は、二つのことを同時に行う「デュアルタスク」が効果的だと言います。運動をしながら、しりとりや計算で頭も使う、といった方法で、いわば運動と脳トレを同時に行うわけです。
例えば、歩きながら、頭の中で、100から順番に7を引いていく(100-7=93、93-7=86…)、俳句や川柳を作る、といったことです。100から7を引いていくのは、認知症検査でも行われ、よく知られた方法。朝田医師は、これをさらに進めて「歩きながら100から7を引き、2を足す」という方法を実践しているそうです。
また、ウォーキングをしながら、漢字を思い出すのも良いといいます。単に思い出すだけでなく、漢字を空中に書くようにイメージするのがポイントです。今日は「さんずい」の漢字、明日は「くさかんむり」というように、いくつ思い出して空中に書けるか、トライしてはどうでしょうか。もちろん、歩行中に事故に遭わないよう気をつけてくださいね。1/2ページ