介護・医療関連ニュース
-
介護と福祉のこれから インターンで課題探り 「現場から学ぶ」(産経新聞)
人材不足が続く介護現場の魅力を発信する試み「これからの介護・福祉の仕事を考えるデザインスクール」で、現場の課題を洗い出し、解決策を考える取り組みが進んでいる。8月末からは、受講者が実際にデイサービスや特別養護老人ホームなどの介護現場を訪問。理想の生活と現実の介護現場との違いを体感した。来年3月に予定される発表会に向け、介護現場を魅力的に発信する方策が少しずつ形になりつつある。
デザインスクールは、街づくり事業などを手がける「スタジオ・エル」(大阪府吹田市)が厚生労働省の補助を受けて全国8カ所で開講。つらい、給料が安いなど負のイメージが先行しがちな介護の仕事を魅力的にすることや、利用者がより快適なサービスを受けられることを目標に、新たなアイデアや製品の発信を行う計画だ。受講者は介護に携わる人だけでなく、デザイナーや主婦、行政関係者など幅広い。
全国に先駆けて開講した関東エリアでは、8月末に東京、神奈川、埼玉、千葉の介護施設6カ所でインターンシップを実施。約50人がグループに分かれて現場を視察するとともに、介護従事者から現場の課題や工夫、理想とする介護のあり方などを聞き取った。
埼玉県熊谷市のデイサービス施設「ハッピーデイHawaii」には8月27日、受講者2人が訪問。同施設は利用者の身体機能回復のためトレーニングマシンを導入しており、受講者で横浜市職員の小宮翼さん(23)は「職場の研修で訪れた横浜市内の施設とは全然違う」と驚いた様子。2人は利用者と交流し、「離職する人を減らしたい」という施設側の希望をかなえる方策を今後の検討課題として持ち帰った。
29日には、受講者5人が東京都練馬区で特別養護老人ホームやショートステイを展開する「育秀苑(いくしゅうえん)」を訪問。「若い世代に介護の魅力を伝えたい」という思いから視察を受け入れた岡本恵美施設長から説明を受け、認知症の入所者らと交流を深めた。のみ込む力が足りない高齢者用の介護食を味わうなど施設の生活も体験した。
視察後、受講者は自分の理想とする生活と施設での暮らしの違いについて意見交換。板橋区の介護施設「志村さつき苑」職員、山本正人さん(43)は「空間が限られる施設では愛着のある物を持ち込むのが難しいが、入所者が自分の思い出を持ち込むことは大事だ」と指摘。受講者からは、自分の物が多く入る棚など施設で使える家具をデザインしたいとの希望が出た。(道丸摩耶)
■8テーマに分類、検討
「デザインスクール」は介護現場の課題の整理にとどまらず、全国の施設で生かせる提案や介護の魅力を広く発信する実践まで行うことを目標にしている。
インターンシップ後に開かれた第3回のスクールでは、インターンでの発見を基に「自分たちが働きたい介護の現場」「自分たちが利用したい介護の現場」について意見を出し合った。意見は8つのテーマに分類され、今後はテーマごとに分かれたグループで、新たなアイデアの具体化を検討する。
高齢者の財産管理などを行う後見人として働く稲岡万貴子さん(39)は「社内のコミュニケーションがとりやすい働きやすい職場」グループに所属。普段の仕事でも同僚との情報共有が大切になっており、「デザインスクールでの検討結果を自身の仕事に導入したい」と抱負を語った。