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【デキる人の健康学】血圧変動が認知症リスク 血圧下げるより安定させることが重要(産経新聞)
本高血圧学会では収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上に保たれた状態を高血圧と定義している。
中年期から高齢期の高血圧は虚血性心疾患、脳卒中、腎不全などの発症原因となるので、中年期からの血圧管理は高齢期の生活の質を保つためにも重要である。
最近の研究では中年期の高血圧が認知症リスクの1つになっていると報告されている。昔は高血圧による脳出血が多かったが、食生活の変化により脳梗塞や動脈硬化による脳血管性認知症の割合が増えているのが現状で、血圧管理の考え方も変えていく必要がある。
そんな中、高齢者では血圧の値よりも血圧の変動の方が認知機能の低下に影響を与えているという発表が話題を呼んでいる。
米国のノースカロライナ大学栄養学のミッシェル・メンデ博士らの研究グループは1991年から2004年の間に中国で実施された健康・栄養調査に参加した55歳以上の中国人成人976人(そのうち約半数が女性)を対象に、医療機関で測定された3-4回の血圧の受診毎変動とその後の認知機能の低下との関連性を検討した。
その結果、収縮期血圧の受診毎変動が大きい高齢者ほど、認知機能および言語記憶の低下が顕著に認められた。一方、拡張期血圧の受診毎変動が大きかった55-64歳の高齢者は認知機能の低下が顕著に認められたが、65歳以上では受診毎変動は認知機能の低下には関連していなかった。
興味深いことに、平均収縮期血圧または拡張期血圧の値はいずれも脳機能の変化とは関連していないことが分かった。血圧の変動は脳の血流の変化や血管の損傷につながる可能性があり、そのような微小血管病変がさらに脳血流の変化や脳機能の低下をもららす可能性をメンデ博士は指摘する。認知機能を保つためには血圧を下げることより安定させることの方がより重要かも知れない。
■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。