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【デキる人の健康学】ケトン体で持久力向上 アスリートの間でも人気(産経新聞)

ココナッツオイルがアルツハイマー病の認知機能を改善させることが報告されてから日本でもココナッツオイルの人気が高まっている。

 ココナッツオイルに含まれている中鎖脂肪酸は小腸で吸収された後、肝臓に運ばれケトン体に代謝されるが、このケトン体が認知機能を改善させていることが最近の研究で分かった。

 厳しい糖質制限食でも肝臓でケトン体が産生されるので、別名ケトジェニックダイエットと呼ばれている。ケトン体は筋肉の代謝を促進させることから、ケトジェニックダイエットはアスリートの間でも人気がでている。

 実際、グランドスラムを達成したセルビア人テニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチ選手は食事をグルテンフリーの糖質制限食に変えてから快進撃が始まったと著書『ジョコビッチの生まれ変わる食事』の中で告白している。

 しかし、認知機能や身体機能を保つように血中ケトン体の濃度を維持するには厳しい糖質制限を続ける必要があり、多くの人が続けられずにリバウンドしてしまう。

 英国ケンブリッジ大学生理学のアンドリュー・マレイ博士とニコラス・ナイト博士らの研究チームはケトン体そのものを食事で摂取することにより認知機能と持久力を向上させられる可能性をラットの実験で証明し話題を呼んでいる。

 研究チームはケトン体をケトンエステルという形でラットに投与した。ケトンエステルは速やかに消化管から吸収されケトン体に変換され、5日間の摂取でラットのトレッドミルでの運動能力が32%向上、八の字迷路での認知機能が38%向上、心臓の代謝とパフォーマンスがケトンエステル投与群で有意に向上した。一方で血中のコレステロール、中性脂肪、血糖は有意に低下していることが分かった。ケトンエステルはサプリメントに応用可能なので、これまで厳しい糖質制限を続けられなかった人に朗報になるだろう。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。