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ポリフェノールやカルシウムはホウレンソウの2倍 メタボ対策や美容面から注目 ハート形野菜の正体は?(産経新聞)

翠(みどり)の王と書いて「すいおう」と読む新野菜をご存じだろうか? ポリフェノールやカルシウムはホウレンソウの2倍以上。ルテイン、葉酸、鉄分なども豊富なことから、メタボ対策や美容面から注目され始めている。女性集客の目玉メニューに、地域おこしに…。ハート形の葉っぱが今まさに、ひらひらと踊り出すようだ。(重松明子、写真も)

 ベーコン入りのキッシュに詰まったすいおうの葉が、口の中でもっちりとろける。ほのかな甘み、わき出す滋味…。その正体は、葉や茎が食用できるように改良されたサツマイモである。

 東京メトロ・新宿御苑前駅近くの東京キュイジーヌでは、8月末からすいおうを使ったランチセット(1296~1620円)を始めた。「以前から提供しているすいおう青汁で、女性の美容熱を実感。料理にも発展させて独自性を打ち出したい」とオーナーの朝里勇人さん(49)。

 グラタンやオムハヤシもいただいたが、トロリとした葉の食味がクリームや卵と好相性だ。「元来サツマイモの葉はえぐみが強く食用に不向きだったが、クセがないでしょう。生葉に焼肉を包んでもおいしいですよ」と、同店に無農薬栽培のすいおうを卸す、埼玉県上里町の生産者、内田保雄さん(67)。

 すいおうは国立研究開発法人・農研機構の九州沖縄農業研修センターがサツイモの茎葉食用に着目し、平成16年に種苗登録された新品種だ。開発にあたった山川理・農学博士(69)は「強い抗酸化力が特徴でアンチエイジング、美肌、生活習慣病予防などが期待できる」。山川博士の指導で4年前から生産に取り組んできた内田さんは、「これまでは青汁用だったが、健康野菜として普及してほしい」と意気込んでいた。

 一方、「すいおうの街」として売り出し中なのが同県坂戸市だ。市政40周年の今年誕生した市キャラクター「さかろん」はすいおうの葉の尻尾を持ち、「すいおうのサンドイッチが大好物」という設定である。この夏、同市で収録、放送されたNHK「のど自慢」では、市民がすいおうの菓子や総菜でスタッフをもてなし、番組冒頭で「坂戸ブランド野菜」として紹介されて、大喜び。「放送後は遠方からの問い合わせもきた」とは、JAいるま野坂戸農産物直売所。茎付きの葉(縦横各20センチ弱)15枚が1束100円。6月に発売したすいおう焼酎は、限定640本が1カ月で完売する人気を集めた。

 市内の女子栄養大学・根岸由紀子教授(栄養学博士)の研究が縁で昨年から市をあげての本格生産が始まり、12軒の農家が出荷している。坂戸市農産物生産組合すいおう部会長、山田ふみさん(72)の畑をたずねると、逆ハート形の葉がイキイキと伸びていた。「1本のツルから何十枚も葉が取れる。芋で焼酎も造れ、茎もおいしく効率的でムダがないわね」。きゃらぶき風に煮てくれた茎はシャキシャキ食感で、かすかな芋の風味がやさしい。収穫期は8月~10月だが、保存食「ドライすいおう」も開発し、坂戸農産物直売所の試食販売催事(10月1日)で発売される。

 案内してくれた市職員は「坂戸にはコレという名物がなかっただけに、大切に育ててゆきたい」。地元の愛でスクスクと成長し、やがて市民の健康増進や医療費削減のお返しを…。色々な意味でハートときめく野菜になりそう!?