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【デキる人の健康学】高齢期の低血圧と降圧剤の関係 血圧を自己制御することも重要(産経新聞)

日本高血圧病学会の分類によれば、収縮期血圧が140mmHg以上、あるいは拡張期血圧が90mmHg以上で高血圧と診断される。

 高血圧には原因が不明の本態性高血圧症や腎臓病や内分泌疾患に合併する二次性高血圧症、病院に来ると緊張して血圧が上がってしまう白衣高血圧症など様々な病態があるが、いずれの病態であっても慢性的に高血圧状態が持続すると脳卒中や心筋梗塞の危険度が増すので、減塩による食事指導と同時に降圧剤が処方される。

 高齢期には動脈硬化により血管抵抗が増し交感神経が優位になるので血圧は上昇傾向を示す。一方で血圧を調節する機能は低下するので、降圧剤を処方されると却って血圧が下がりすぎて低血圧になり脳や腎臓の血流が低下して認知機能低下や腎機能低下をもたらすこともある。

 英国のケント大学の東ケント病院のファーマー教授らの研究チームは70歳以上の高齢者では低血圧にも関わらず降圧剤を処方されている高齢者が多いことに注目した。研究チームが70歳以上の11,167人の患者データを分析した結果、収縮期血圧が100mmHg未満の低血圧の高齢者128人のうち89人(約70%)もの高齢者が降圧剤の投与を受けていることが明らかとなった。

 降圧剤には副作用もあるが血圧を下げることのメリットと薬の副作用を両天秤にかけて降圧剤の治療が開始される。しかし、加齢や他の薬に関連した生理学的変化に合わせて降圧剤の減量や見直しを定期的に行うことが重要とファーマー教授は警鐘を鳴らす。降圧剤を処方されている低血圧の高齢者は薬の副作用のみならず、低血圧によるデメリットをも考慮する必要があることを研究チームは指摘する。

 降圧剤はあくまでも対症療法なので、まずは薬に頼らず塩分の多い食生活を見直し、十分な睡眠を確保し、生活上のストレスを極力減らすことにより血圧を自己制御することも重要だ。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。