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生活習慣病は熱中症のリスクも高める…その理由とは

うっとうしい梅雨の季節が過ぎると、本格的な夏の到来です。さあ、夏休み、海だ、山だ、と浮かれたのも昔のこと。最近は何よりも「熱中症」を避けることが最優先になってしまいました。特に真夏日や酷暑日が連続することが常態化した昨今の日本で真夏に野外で遊ぶことは、命の危険が伴うといってもよいでしょう。しかし「夏に野外で遊べなくなった」のは、単に昔より気温が高くなったことだけではなく、私たちの「体力」にも問題があるようなのです。特に、生活習慣病と体温調節能との間に密接な関係があり、生活習慣病を患っている方は熱中症にもかかりやすいらしいということが、最近の研究で分かってきました。今回はその理由について、私たちの最近の研究結果をお見せしながらお話ししていきましょう。【信州大学学術研究院医学系特任教授・能勢博/メディカルノートNEWS & JOURNAL】

◇ヒトの体温調節能は血液量に依存する

「血の気が多い」という言い回しは、「興奮しやすい」など、どちらかというとマイナスイメージの表現です。しかし、文字通り「血が多い」ことは、ヒトとして優れた能力を生み出してくれます。どういうことでしょうか。

諸説ありますが、ヒトが地球上に広く生息できた原因として、2本足で運動(移動)すること、皮膚の下に張り巡らされたたくさんの血管に多くの血液が流れて汗によって体の熱を放散する優れた体温調節能力を持っている――ことが挙げられます。私たちは2本足で移動することで、両手(前足)を使い狩猟の獲物などを持ち運べるようになりました。そして、運動で発生した大量の熱を素早く放散できる優れた体温調節能力のおかげで、広い大地を長時間歩いたり走り回ったりできるようになりました。

この2足歩行と体温調節能力という2つの機能を維持するために「血液量」が重要なのです。簡単に説明すると、心臓に還ってくる血液が多ければ多いほど、心臓は下肢を含めた筋肉に多くの酸素を供給できますし、皮膚表面にも多くの血液を送り、熱を体外に放散することができます。事実、マラソンなど長距離のトップアスリートは、普通の人に比べて体重あたり「2倍」近い血液量を持っています。

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