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日常に笑いで免疫力アップ がんや認知症予防に効果

笑う門には福来る――。朗らかに過ごせば幸せがやって来るということわざだが、実際、笑いが免疫力を高める効果が明らかになってきた。笑いを暮らしに取り入れ、さまざまな疾患や認知症の予防に生かす取り組みが広がっている。長く健康的な生活を支える現場を追った。
「ホッホ、ハハハ、ホッホ、ハハハ、イェーイ」。20人近い年配の男女が笑い声を上げながら両手を広げる。そしてさまざまなポーズを取り体を動かす。日本笑いヨガ協会(東京・千代田)がJR水道橋駅近くのビルで毎週開く体験会だ。
笑いヨガは笑いの体操とヨガの呼吸法を組み合わせた健康法。無言でするより酸素を多く取り込め、気分も晴れる。楽しみながらできるので、きつい運動もこなせるのが利点だ。
東京都文京区の宮本圭子さん(55)は腎臓病や膠原(こうげん)病を患ってきた。その影響で足が冷え歩くのもつらかった。ところが3年前に笑いヨガを始めると、足が温かくなり歩行が楽に。「くよくよしても仕方がない。病気と付き合いながら生きていこうと考えられるようになった」と宮本さんは笑顔で話す。
笑いヨガ協会代表の高田佳子さんは「笑い声を出して運動すると、幸せホルモンのセロトニンが分泌され、ストレスホルモンのコルチゾール値は下がる」と効用を説く。大阪や福岡などでも体験会を開くほか、手法を学んだ人が公民館などで教室を開く例もある。
笑いと健康の関係を調べた研究は多い。大阪府立健康科学センターが健診を受けた八尾市の住民を調べたら、65歳以上の985人のうち認知機能が低下する危険性は、ほとんど笑う機会がない人の方がほぼ毎日笑う人に比べ2.15倍も高かった。
免疫力の向上にも寄与する。大阪国際がんセンターは2017年、落語や漫才を4回鑑賞したがん患者30人と、しなかった30人を比較した。鑑賞した群はがんを攻撃する免疫細胞「NK細胞」が増える傾向にあり、中には1.3倍増えた人もいた。だが、鑑賞しなかった群に変化はなかった。
笑いを日常生活に取り込むにはどうしたらいいか。日本笑い学会副会長で医師の昇幹夫さんは「落語のDVDを聴くのもいいし、寄席に足を運んでもいい。若い頃、楽器が好きだった人は素人バンドに参加するのも手だ。好きなことをやれば笑顔になれる」と話す。
そのうえで日ごろの心得として「あいうえお」を挙げる。「あ」は会いたい人に会う、「い」は行きたい場所へ行く、「う」は歌いたい歌を歌う、「え」は遠慮はしない、「お」はおいしいものを食べる。他人の目を気にせず、やりたいことをせよという教えだ。
大阪府立健康科学センターの認知症調査をまとめた福島県立医科大の大平哲也教授は「笑い日誌」の活用を勧める。自分が1日何回笑ったかをノートに書き込むのだ。歩数を記録すると歩くことが励みになるのと同様、日誌を書くことで笑いを意識するようになる。
もう1つ、効果的なのがペットを飼うこと。人間は赤ちゃんと動物を見ると自然に笑顔になるという。大平教授は「特に犬を飼うと散歩に連れて行かなければならず、飼い主同士で会話がはずむことも多い。日ごろから笑顔になる環境づくりを心がけることが大事だ」と指摘する。
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