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ウォーキングなどの有酸素運動で脳が若返る可能性も?

先週から今週にかけて日本列島は春本番の暖かさで桜前線が一気に北上。アウトドアシーズンの到来だ。

そんな季節にシニアでも手軽に始められる運動の一つがウォーキング。3カ月ほど前になるが、老後が迫るシニア世代にとって興味深い研究結果がアメリカで発表された。ウォーキングなどの有酸素運動を半年間行うことで脳が若返った可能性があるという研究だ。

この研究結果は米デューク大学医学部教授のジェームズ・ブルーメンソール氏らが昨年12月に「Neurology」オンライン版に発表したもので、加齢に伴い記憶力や思考力に衰えが見られる55歳以上の男女が、ウォーキングや室内サイクリングなどの有酸素運動を週3回継続した結果、「実行機能」と呼ばれる能力が向上することが判明。食生活も同時に改善した場合は、脳の実行機能の能力が9歳ほど若返ったという。実行機能とは物事を整理して計画的に行動する能力で、これが損なわれた実行機能障害は記憶障害や理解・判断力低下と並び認知症の中核症状の一つ。

参加者は、高血圧など心血管系疾患のリスクをもつ55歳以上、平均年齢65歳の160人の男女で、いずれも運動をほとんどしたことがなく、集中力低下などの認知機能に関連した症状が確認されていた。アルツハイマー病と診断された人や、運動ができない人は除外されている。

研究では、参加者を(1)高血圧予防・改善のため塩分・糖分と肉類・乳製品を控え野菜や果物を積極的に摂る「DASH食」と呼ばれる高血圧患者向けの食事をとるグループ、(2)ウォーキングなど軽い有酸素運動を週3回行うグループ、(3)DASH食と週3回の運動を両方行うグループ、(4)心血管系疾患のリスク低減に関する助言と健康指導のみ行い食生活や運動の習慣は変えないグループ、という4つに分けて、半年間観察。実験の開始前と終了後に、それぞれ認知力検査や体力測定を行った。

その結果、運動を行った2つのグループでは他のグループに比べて実行機能が改善したのに対し、健康指導のみで生活習慣を変えなかったグループでは認知機能がさらに低下、DASH食のみを行ったグループでは有意な変化は見られなかったという。効果は、運動とDASH食の両方を行ったグループが最も高く、脳が9歳ほど若返ったと判定された。

ブルーメンソール氏は、食生活改善と運動の習慣が脳に良い影響を与えた理由は明らかになっていないとしながらも、今後もこれらの有効性を検証するための研究を行うという。

運動習慣はQOL(生活の質)向上のためにも重要だ。日々の小さな努力の積み重ねの先にこそ、健康な老後が待っている。

Lifestyle and neurocognition in older adults with cognitive impairments: A randomized trial.
PMID: 30568005 PMCID: PMC6340382 [Available on 2020-01-15] DOI: 10.1212/WNL.0000000000006784

医師・専門家が監修「Aging Style」

 

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