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「脳の老廃物」を除去するには、深い睡眠が必須だった

あなたの家族や友人のなかに、全身麻酔下の手術の末に突然の「認知障害」を経験した高齢者がいるかもしれない。科学学術誌『Science Anvances』で2019年2月下旬に発表された麻酔による睡眠の最新研究によると、こうした一時的な認知障害は、脳の清掃機能が原因のひとつである可能性を教えてくれる。

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論文は「睡眠と脳の清掃機能」の関連性について詳しく追究したもので、深い、ノンレム睡眠時にあらわれる、ゆっくりと一定した脳活動(デルタ波)と心肺活動が、脳の老廃物排出プロセスに最も効率がよいことが実験により明らかにされている。この知見により、睡眠不足とアルツハイマー病の関連性や、なぜある種の麻酔が高齢者の認知障害につながるのか説明できるという。

睡眠中に“脳の清掃”をするシステム

「睡眠は脳の老廃物排出システムにおいて非常に重要です。この研究では、深い睡眠であればあるほど効率的であることがわかりました」と説明するのは、この論文の筆頭著者であるロチェスター大学メディカルセンターのマイケン・ネダーガーである。「これらの知見はまた、睡眠の質や睡眠不足が、アルツハイマー病や認知症の発症を予測できるという根拠を、ますます強固なものにすることでしょう」

われわれの体内には、細胞に栄養を運んだり、細胞から排出された老廃物を運び出して処理するリンパ系がある。脳内にもこれによく似たグリンパティック・システムと呼ばれる働きがある。

脳と脊髄には無色透明の脳脊髄液とよばれる液体が循環しており、それは脳と脊髄の血管周囲に沿って移動しながら栄養分を分配し、老廃物を取り除く。われわれの睡眠中には、脳内のグリア細胞の一種であるアストロサイトが縮んで隙間をつくり、その隙間が脳脊髄液の排水溝のような役割を果たすという。これがリンパ系のように脳内老廃物を効率よく運び出すことから、グリア細胞とリンパ系をかけ合わせ、「グリンパティック・システム」と呼ばれるようになった。

かねて睡眠不足だったり睡眠の質が低かったりする人ほど、アルツハイマー病の原因のひとつといわれるアミロイドβ濃度が高いという報告があり、睡眠と老廃物除去の関連性が疑われてきた。では、このグリンパティック・システムの清掃効率は、睡眠の質により変化するのだろうか?

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