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咽頭がんのリスクにも影響=子宮頸がんで問題のウイルス

感染すると子宮頸(けい)がんや尖圭(せんけい)コンジローマなどを一定の確率で引き起こすことが知られているヒトパピロマウイルス(HPV)。しかし、HPVの危険性はこれだけにとどまらない。咽頭がんの一部の中咽頭部がん=用語説明=の患者の多くで患部にHPVの感染が報告され、喫煙や過度の飲酒などと並んでHPV感染が発症リスクとして影響していることが分かってきた。

 このHPVは子宮頸部(けいぶ)や中咽頭などの粘膜に付着して増殖し、免疫などの攻撃を生き延びて長期間の継続感染に移行した場合、確率は低いが細胞のがん化につながる、といわれている。

咽頭がんのリスクにも影響=子宮頸がんで問題のウイルス

吉本世一・国立がん研究センター中央病院頭頸部外科科長

 ◇飲酒・喫煙原因と異なる治療効果

 「中咽頭がんは、HPVの影響を受けているものと過度の飲酒や喫煙が主な原因と推定されるものに大別できる、と言う方が正しい表現かもしれない。なぜなら、治療効果も治療後の展開も大きく異なるからだ」。国立がん研究センター中央病院の吉本世一頭頸部外科科長は、こう説明する。

 吉本科長によると、20年以上前から、飲酒や喫煙歴がないのにへんとうに腫瘍が発生する患者が中咽頭がん全体の10%前後いることが、臨床経験上分かっていた。ただ、これらの患者は飲酒・喫煙歴のある患者より治療効果が高く、「治癒」(完治)が得られる例が多い。

 2000年を過ぎた頃から、これらの患者が患部にHPV感染が確認されるようになった。検査を進めていくと、欧米で中咽頭がん患者全体の70~80%、日本やアジアでも50%以上が感染していることが明らかになった。

 このため、同センターの一般向けのがん啓発サイトは「中咽頭がんの発生には、喫煙・飲酒との強い関連があります。また、HPVが中咽頭がんの発生する危険性を高めることがわかっています」と記載し、がんの進行状況や病期の評価を、HPV感染の代用マーカーである特定のタンパク質(p16)に対する免疫染色の結果に応じて2種類に分けて紹介している。

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