介護・医療関連ニュース

肝臓や腎臓の重大な病気も… 死に至る“痒み”の見極め方

立冬を過ぎ、一気に肌寒く感じる日が増えてきた。冷たい空気や昼夜の寒暖差で気になるのが乾燥肌だ。

 乾燥による肌荒れや痒み(かゆみ)といった「肌トラブル」、実は注意が必要だ。順天堂大学医学部名誉教授・高森建二氏が説明する。

「冬は湿度が低く、暖房器具の使用によって室内でも空気が乾燥するため、肌の乾きを訴える人が多くいます。特に60歳以上では、男女関係なく全体の95%が『老人性乾皮症』という調査結果もあります。早い人では40代から症状を訴えるケースもある」

 こと男性は「ちょっとした痒み」だと放っておきがちだが、重大な病気のサインである可能性もある。

◆“沈黙の臓器”の訴え

 昔から「肌は内臓の鏡」と言われてきた。近藤病院元院長で内科医の中野博貴氏が言う。

「腎臓の機能が落ちると、血液中の『電解質』のバランスが崩れます。特に、カルシウムはパウダー状になって皮下に沈着しやすくなる。それが痒みを引き起こす。放っておくと、腎不全で人工透析が必要になってしまう場合もあります」

“沈黙の臓器”と呼ばれる肝臓も、痒みで異常のサインを出すことがある。

「肝臓では、胆汁という消化液が作られます。普段、胆汁は胆管を通って十二指腸へと流れていきますが、肝臓の疾患があると胆汁がうまく流れず、主な成分である『ビリルビン』という物質が血液中にしみ出して全身にまわる。このビリルビンが、痒みを誘発するんです。急性肝炎などが疑われ、最悪の場合肝硬変につながります」(同前)

 胆汁による痒みは、肝臓のトラブルを示すだけではない。

「胆のうがんや胆管がん、すい臓がんによって、胆汁の流れがせき止められ、痒みの症状となっているケースも考えられます」(同前)

 では、“死に至る痒み”かどうかをどう見極めればいいのか。

「保湿剤や塗り薬を使っても皮膚の痒みが治らないようなら、内臓に起因していることを疑うべきです。乾燥肌は体全体に痒みを感じますが、内臓疾患が原因の場合、肘の内側やひざの後ろ側など、皮膚のやわらかい部分に出やすい」(宮元通りクリニック院長で内科医の渡会敏之氏)

 中野氏が続ける。

「胆汁が原因の場合、黄疸が出ることが多い。初期だと、まず白目が若干黄色くなります。痒みが治まらないなら、黄疸の有無を確認するのも1つの方法です」

 痒みは、人体の「アラームリアクション(警告反応)」とも呼ばれる。そこにはちゃんとした理由があるのだ。

※週刊ポスト2018年11月30日号