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心房細動患者は認知症リスク高く…小さな血栓、脳で詰まる?
心房細動患者は認知症になりやすい――。欧米を中心とした最近の研究結果から、こうした見方が定着しつつある。発症の仕組みは解明されていない点もあるが、専門医は「認知症を予防するためにも、心房細動は治療して」と呼びかけている。
(森井雄一)不整脈の一種、血栓ができやすくなり…
心房細動は不整脈の一種で、心房が不規則にふるえて脈拍が乱れる病気。心臓の中で血の流れがよどみ、血の塊(血栓)ができやすくなる。血栓が脳の血管に詰まると重い脳梗塞(こうそく)を引き起こすため、血栓をできにくくする薬(抗凝固薬)を服用する。
こうした脳梗塞や脳出血など脳卒中を引き金に、認知機能が低下するのが血管性の認知症だ。主な症状として、もの忘れや意欲の低下のほか、同じ作業が状態によってできたりできなかったりする「まだら認知症」などがみられる。
欧州などで行われた住民の追跡調査では、心房細動がある人はアルツハイマー型認知症のリスクを高めるとの結果も出ている。アルツハイマー型は認知症で最も多く、脳内にアミロイドβ(ベータ)という異常なたんぱく質が過剰にたまることや、神経細胞が傷つくことが知られている。
脳卒中で起こる血管性認知症以外は、心房細動と認知症の関係はよく分かっていない。専門家は、心房細動で生じる血管内の変化が原因ではないかと推測。▽目に見えない小さな血栓が脳の細い血管に詰まる▽抗凝固薬の影響で脳内に微小な出血が起きる▽脳内の血液の循環が低下する――などに注目している。
米国の研究チームは2013年、信頼できる複数の論文から8万人超のデータを解析。心房細動がある人のうち、脳卒中を経験した人の認知症リスクは2.7倍、脳卒中経験がない人のリスクも1.3倍になるとの結果を発表した。心房細動と認知症の関係を裏付けるものだ。
熊本市民病院神経内科部長の橋本洋一郎さんは「心房細動が認知症に悪影響を与えていることは、ほぼ確実と言える」と指摘する。
欧米などの不整脈学会は今年3月、「認知機能の低下を予防するため、適切な抗凝固療法を行うべきだ」「禁煙や高血圧、肥満の予防などの一般的な健康対策は、心房細動や脳卒中のリスクを下げ、認知機能に利益をもたらす」などとする勧告を出した。1/2ページ