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【デキる人の健康学】日光浴で寿命延伸 習慣的でメリットとデメリット(産経新聞)

外線は皮膚がんのリスクを増やし、皮膚の光老化を促進するのでシミやシワなどの皮膚の老化症状を加速するとされ、多くの日本人が紫外線を回避している。

 しかし、紫外線を浴びることにより皮膚の細胞でビタミンDの前駆体が合成されることから、紫外線を回避することはビタミンD欠乏症の原因になるとの警鐘が鳴らされている。

 高齢期にビタミンDが欠乏すると骨粗鬆症、認知症や癌のリスクを増やすことから、高齢期の生活の質を低下させ寿命を短縮している可能性が指摘されている。習慣的に日光浴することが寿命に及ぼす影響に関してはメリットとデメリットがあり、どちらを優先したら良いのかに関して議論も多い。

 そんな中、スウェーデンのカロリンスカ大学のリンドクビスト博士らの研究グループは29,518人のスウェーデン人女性を20年間に渡り追跡調査し、日光浴の習慣と皮膚がんの発症率や寿命との関連性を検討した。

 研究グループは日光浴の習慣に関して、夏や冬にどのくらいの頻度で日光浴をするか、休暇中に海水浴などの日光浴を計画するか、習慣的に日光浴ベッドを使用しているかなどの質問から対象者を3群に分けて比較分析した。その結果、最も日光に当たる習慣のある群の人たちは他の群に比べて有意に寿命が長いことがわかった。

 死亡率を詳細に検討すると日光浴群では心臓病による死亡率が顕著に低下していることが分かった。しかし、日光浴群では寿命か長寿化したために死亡率における癌の相対的寄与率が増える結果となった。

 興味深いことに日光浴をしない非喫煙群の死亡率と日光浴の習慣のある喫煙群の死亡率がほぼ同じレベルであったことから、リンドクビスト博士は日光浴を避けることは喫煙リスクと同等で0.6-2.1年の寿命を短縮するデメリットがあると警鐘を鳴らす。今回の研究は北欧の調査ではあるが、紫外線を回避する傾向が一般化した日本でも同様の調査が必要だろう。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。