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「頭がかゆい」のは新種の水虫かも!?柔道やペットで感染も(ダイヤモンド・オンライン)

水虫といえば、誰もがかかりうるおなじみの感染症で「足にできるもの」というイメージが強いが、最近は柔道などの格闘技を通じて海外から国を越えて入ってきたり、ペットを通じて頭にできる“新種”の水虫も登場している。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

● 長男の頭に大きなフケ 抜け毛も伴う“水虫”だった

 「あらやだ、あんたフケが浮いてるわよ。ちゃんとシャンプー使って頭洗ってるの」

 都内に住む女性(40代)はある朝、長男(17歳)の短く刈り込んだ頭に、ポテトチップスのカスみたいに大きなフケを発見し、注意した。長男は柔道部。イマドキの高校生にしては珍しく、おしゃれには無頓着なところがある。めんどくさがってシャンプーを省略し、シャワーだけで済ませている可能性は十分あると思ったのだ。

 「ちゃんと洗ってるよ。でもなんかさ、かゆいんだよね、このごろ。それにほら、ここんとこ、赤くなってない。やばいよね。髪の毛も抜けるしさ」

 よく見ると、直径1~2センチぐらいの赤みがかった斑点が頭部の何ヵ所かにできており、顔にもあった。頭部にはほかに黒い小さな点々も見える。長男はわりと赤ら顔でひげも濃い。年相応にニキビも花盛りだったので、女性は見逃していた。

 「ほんとだ、赤くなっている。かゆいの」

 「うん、少し。それに毛が抜けるんだよ。俺、はげちゃうのかな」

 小さな声で訴える表情が不安げだ。変声期を過ぎて野太くなった声、身長も180センチを超え、すっかり大きくなりはしたが、まだまだ子どもである。

 「そっか、じゃあ今日は部活休んで、学校が終わったら病院行こう」

 約束し、送りだした。

 そして放課後、皮膚科のクリニックで待ち合わせると、長男は明るい顔で切りだした。

 「コーチに話したら、水虫かもっていわれたよ。トンズランスっていう新しいタイプで、柔道部とか、格闘技選手を中心にはやっているんだって。柔道連盟のホームページでも、『柔道選手のトリコフィトン・トンズランス感染症』に注意って、載ってたよ。それでほかの皆の頭とかも調べてみたら、いた(笑)。俺だけじゃなかった」

 自分だけではなかったのがよっぽどうれしいらしく、元気いっぱいに報告してくれた。

● トンズランスの特徴は 感染力が強く、治りにくい

 長男の表情は明るくなったが、喜んではいられない。トンズランスはやっかいな水虫だ。とにかく感染力が強く、一度感染すると治りにくいという特徴を持っている。

 正式名称は「トリコフィトン・トンズランス(Trichophyton tonsurans)感染症」。

 原因は、トリコフィトン・トンズランスという水虫菌(白癬菌)で、2001年以降、柔道、レスリング、相撲などの学生格闘技部員の集団発生が次々と報告されるようになった。

 「トンスラ」とは、頭頂部が円形に脱毛したフランシスコ・ザビエルのような髪形を指す言葉で、この感染症にかかると毛が抜けてしまうことから名付けられたようだ。

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