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メタボから低栄養へ、対策いつ変えるべき?-老年医学会が栄養、摂食・嚥下でセミナー(医療介護CBニュース)

日本老年医学会(楽木宏実理事長)は9日、東京都内で高齢者の栄養、摂食・嚥下をテーマにプレスセミナーを開催した。名古屋大大学院医学系研究科の葛谷雅文教授(地域在宅医療学・老年科学)は講演で、65歳までは過栄養メタボリックシンドロームなどの対策が重要になる一方で、後期高齢者となる75歳以上では、健康維持のための栄養が不足する「低栄養」が大きな問題になると指摘した。前期高齢者の65歳から74歳までは、個々の患者に応じた対応が求められるという。【大戸豊】

 葛谷教授は、高齢者の栄養に関する課題には、フレイル(虚弱状態)などの予防を進めるべき第1フェーズと、要介護状態での低栄養に注意する第2フェーズがあるという=図1=。
 葛谷教授は、前期高齢者となる65歳はまだまだ元気でも、食欲や摂食量が少しずつ低下していくものの、この時期は体重減少にはつながりにくいという。しかし、75歳以上では、体重の減少が少しずつ進み、放置すると80歳代で低栄養状態になり、摂食嚥下障害や誤嚥性肺炎につながるなど、負の経過をたどる危険性があるという。

 では、どの年齢までメタボ対策を進め、いつの段階から低栄養に気をつけるべきなのか。
 葛谷教授は65歳より前では、メタボ対策など生活習慣病予防が重要としつつ、75歳以上では低栄養症候群への対応が重要になると指摘。この間では、生活習慣病対策が必要な人と、今後の低栄養に注意すべき人が混在しているため、医療者は個別の患者の状況を見て、対応する必要があるという=図2=。

 疾病の状態や咀嚼(そしゃく)・嚥下機能、加齢の影響は患者でそれぞれ異なるため、低栄養に気付いても、必ずしも介入がうまくいくわけではない。ただ、葛谷教授は、栄養不良が予防できたり、栄養介入によって救われる高齢者が確かに存在するので、医療者はそのような高齢者を見逃さず、診療を行う必要があるとした。また、栄養療法は多職種連携を抜きに構築できないと訴えた。