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【ストレス社会で働く(4)】ストレスチェックで職場環境改善を「やらなければ意味半減」
昨年11月に鬱(うつ)病と診断され、今年2月に職場復帰した映像制作会社に勤める30代の男性社員が、新宿ストレスクリニック(東京都新宿区西新宿)でTMS(経頭蓋磁気刺激)治療を受け始めて2カ月以上が経過した。
⇒〔前回まで〕磁気刺激で鬱治療「改善の質が向上」 1年間で手応えも
大脳の背外側前頭前野に磁気刺激を与えることで、薬のいらない画期的な治療として米国で目覚しい成果を挙げている治療で、同クリニックは治療に使う機器を国内最大となる89台(新宿・梅田・名古屋合わせて)を所有。日本では保険が適用されないため高額な治療費がかかるのがネックとなっている。
「調子はよいと感じているのですが」。男性が苦笑しながら話す。数回目となるTMS治療に立ち会った医師から「効果が出ていないようだ」との報告があり、主治医である川口佑院長の問診を受けた後だった。
目下の悩みは治療時間の確保だ。心理士や主治医による問診がなければ、待合時間を含めても1回1時間で済むのだが、それすら仕事が佳境を迎えるとなかなか確保できないという。男性は「ついつい以前のように仕事にのめり込んでしまう」と吐露する。
昨年12月から始まったストレスチェック制度の目的は一時予防だ。メンタルヘルスの不調者を出さないよう対策を打つわけだが、発症してしまったら自らの意志で治療を受けなければならない。
男性は薬を服用せずにTMS治療を選んだからこそ、眠気や倦怠感、頭痛などの副作用に悩まされることなく、仕事に打ち込むことができる側面もある。「早く以前のように仕事がしたい」。効果はまだ出ていないというが男性の前向きな言葉に完全寛解の日は必ず来るのではないか、と期待する。
鬱症状と診断された筆者が長期休養したのは2年以上前の話になる。それから1年後に光トポグラフィー検査を受ける機会があった。双極性II型障害(躁鬱病)と診断され、TMS治療を受けて現在に至る。循環気質と呼ばれる遺伝的気質のため、相変わらず朝が極端に弱く夜になれば元気になるが、勤務制限も解除され健常者とともに支障なく仕事をこなしているつもりだ。
筆者の症状とは違うが、男性にも効果を持続するのに必要とされる30回まで治療を受け続けてほしい。そして職場も男性が治療を受けられる環境をつくってほしい。同クリニックで治療を受けた患者のうち2割は効果がなかったという現実がある一方、改善すれば以前と変わらぬ100%の力で会社に貢献できる可能性もあるのだから。