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ゲノム編集でアルツハイマー病を予防する(理化学研究所プレスリリース)

理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター神経老化制御研究チームの西道隆臣チームリーダー、永田健一研究員らの研究チームは、ゲノム編集技術を駆使した実験により、アルツハイマー病発症の原因となるアミロイドβペプチド(Aβ)の蓄積を抑制する遺伝的な欠失を発見しました。

本研究成果は、ヒト集団での新しい保護的変異同定の土台になるとともに、核酸医薬などの予防的治療法の開発につながると期待できます。

アルツハイマー病は、認知症の半数以上を占める進行性の神経変性疾患です。患者の脳では約40個のアミノ酸からなるAβが凝集・蓄積し、これが疾患発症の引き金となります。これまでのヒト臨床研究から、300を超える遺伝子変異が疾患発症の原因となることが報告されており、同定された遺伝子変異の多くはAβの凝集・蓄積を高める作用を持つと考えられています。一方で、アルツハイマー病の発症リスクを低下させる遺伝子変異はほとんど同定されていませんでした。

今回、研究チームはアルツハイマー病モデルマウスの作製過程で出てきたネガティブデータをヒントに、ゲノム編集技術を駆使して特定の遺伝子領域を700塩基および400塩基欠失させました。脳切片を作製し、定量的に評価したところ、どちらの場合でもモデルマウスの特徴であるAβの蓄積が欠失の程度に依存して低下していました。最終的に、わずか34塩基の配列を欠失させただけでAβの蓄積が抑制されることが明らかになりました。

本研究は、英国のオンライン科学雑誌『Nature Communications』(5月4日付:日本時間5月4日)に掲載されます。

(理化学研究所 プレスリリースより)
http://www.riken.jp/pr/press/2018/20180504_2/